今日は、令和3年度 第26問について解説します。
定期建物賃貸借契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
①中途解約特約のある定期建物賃貸借契約において、貸主は契約期間中であっても、正当事由を具備することなく契約を解約することができる。
②定期建物賃貸借契約書は、同契約を締結する際に義務付けられる事前説明の書面を兼ねることができる。
③賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法第 35条に定める重要事項説明を行う場合、定期建物賃貸借契約であることの事前説明の書面は不要である。
④定期建物賃貸借契約において、賃料減額請求権を行使しない旨の特約は有効である。
解説
定期建物賃貸借に関する問題です。
定期建物賃貸借契約は、更新がない賃貸借契約です。
まとめシートでは、定期建物賃貸借契約について普通賃貸借契約との違いを挙げて解説しています。
定期建物賃貸借の成立要件は①書面等による契約方法②事前説明(更新がないことについての説明)③更新がないこと(更新否定条項を定める)④契約期間を必ず定める の4つです。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢①
中途解約特約のある定期建物賃貸借契約において、貸主は契約期間中であっても、正当事由を具備することなく契約を解約することができる。
×不適切です。
定期建物賃貸借契約は、期間の定めのある賃貸借契約です。期間の定めのある建物の賃貸借は、原則として中途解約ができませんが、中途解約の特約を定めた場合は、中途解約をすることができるとされています。
ただしこの場合、貸主からの解約申し入れの場合は、「正当事由」が必要です。
つまり、中途解約特約のある定期建物賃貸借契約において、貸主は契約期間中であっても、正当事由を具備することなく契約を解約することはできません。よってこの選択肢は不適切です。
ちなみに、正当事由とは、読んで字のごとく、「正当で合理的な理由」を意味しますが、建物賃貸借においての正当事由は、貸主と借主の必要性についての事情を比較して検討するものとされています。
貸主から建物賃貸借契約を終了させるときや、更新拒絶をする場合は正当事由が必要です。
選択肢②
定期建物賃貸借契約書は、同契約を締結する際に義務付けられる事前説明の書面を兼ねることができる。
×不適切です。
定期建物賃貸借契約を締結する場合、貸主は契約前にあらかじめ、更新がなく、期間満了によって終了することを借主に説明し、書面を交付する必要があります。これが「定期建物賃貸借契約を締結する際に義務付けられる事前説明の書面」のことです。この事前説明の書面は、契約書とは別のものでなくてはいけません。そもそも、契約の「事前」に行う説明と、契約の「締結時」の書面は、タイミングが異なるので、タイムリープしない限り一緒にはならないですね。
つまり、定期建物賃貸借契約書は、同契約を締結する際に義務付けられる事前説明の書面を兼ねることができません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢③
賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法第 35条に定める重要事項説明を行う場合、定期建物賃貸借契約であることの事前説明の書面は不要である。
×不適切です。
宅地建物取引業者が仲介をして定期建物賃貸借契約を締結する場合、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明を行う必要があります。しかし、借地借家法上、貸主が借主に定期建物賃貸借契約であることの事前説明を行う義務については、宅建業法上の重要事項説明を行っても、替えられるものではありません。同じ「説明」でも、それぞれ別の法律によって定められている「別の義務」だから一緒にはならないんですね。
つまり、賃貸借の媒介業者が宅地建物取引業法第 35条に定める重要事項説明を行う場合、定期建物賃貸借契約であることの事前説明の別個独立した書面が必要です。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢④
定期建物賃貸借契約において、賃料減額請求権を行使しない旨の特約は有効である。
〇適切です。
もう一度、まとめシートの解説を確認してみましょう。
賃料の「減額なし」特約、OKとありますね。
普通建物賃貸借契約の場合、借主による賃料減額請求権を排除することは、特約を設けたとしても無効になります。それに対し、定期建物賃貸借契約の場合は、賃料減額請求を排除する特約は有効です。
よってこの選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢④となります。
定期建物賃貸借に関する問題は、毎年出題されています。重要なテーマの一つですね。
このテーマに関しては、比較的論点が限られているため、過去問をおさえておけば点数がとりやすい傾向があります。
本ブログでは今後も定期建物賃貸借に関する問題を解説していきますので、ぜひブックマークをお願いいたします。
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